85歳の打越シズさんは、築50年の海岸通団地に住んでいる。団地は間もなく壊されて、新しいマンションに建て替えられる。建て替えを通じて、引っ越しや家賃の問題に直面する打越さんと団地婦人たち。彼女たちはそれらを乗り越え、逞しく生きてゆく。

What happens when a Japanese octogenarian is forced to move after 30 years of life in one place?

天井まで積み上げられた段ボールと、アナログの家電製品の山の中に、埋もれるようにして一人で暮らしている女性がいる。打越シズさん、85歳。30年前、現在の横浜みなとみらい地区にある団地の一室に引っ越してきた。

昭和30年代から高度経済成長期にかけて全国各地に建てられ、豊かさの象徴と憧れであった「団地」。しかし現在、居住者の高齢化と建物の老朽化がすすみ、次々と建て替えが行われている。打越さんが住む「海岸通団地」も2011年秋に高層マンションとなり、すでに住民たちはみな団地を出ている。

母親を早くに亡くして以来、2人の弟たちの面倒を見ながら、企業で定年まで働いてきた打越さん。しかし最近は、「彼氏」と称する怪しげな金融業者が家に出入りするなど危なっかしい一面も。そんな中で、体調面での不安を抱えつつ、新しいマンションへの引越しに向けて、打越さんは着々と片付けを始めている。しかし、荷物が多すぎるため、その作業は一向にすすまない。おまけに、部屋いっぱいに詰め込まれている荷物を、今よりも狭くなる新居に「すべて持っていく」と言い張っているのだ。そんな打越さんに対して、団地の自治会長で水彩画家の平山礼子さんをはじめ、まわりの団地婦人たちは飽きれながらも心配し、荷物を減らすよう何度も忠告している。しかし、本人にはどこ吹く風。ひょうひょうと受け流されてしまう。そうこうしている間にも、引越しの日は容赦なく迫ってきているが……

85 years old and never married, Shizu has spent the past 3 decades living in one “Danchi” – the Japanese word for public housing – and filling it with the lifetime of souvenirs that have always kept her company. When the danchi is scheduled for demolition, Shizu and neighbors must say goodbye to their homes, and move into newer danchi that are too small to hold all of Shizu’s momentos. This intimate documentary captures Shizu’s sense of humor, and profound nostalgia, as she sorts through relics of her past, and chooses which memories she must fit into her new home, and which ones she can let go of.